昨今アメリカの一般のテレビニュースや新聞でもよく取り上げられているトピックのひとつとなっているデューク大学ラクロス部の問題についてです。3月中旬に校舎外にあるラクロス部員が住んでいるアパートでラクロス部のパーティー(飲み会)が開催されました。このようなアパートはアメリカではOff-Campus Residenceと呼ばれ、アメリカの大学ではよくある形式です。一軒家を借り切って学生5人から10人(それ以上?)でルームシェアします。キッチン・リビングルーム(10人くらいは余裕でくつろげる)・風呂・トイレ等を共同で使用し、寝る部屋(ベッド&勉強机)だけ個別に鍵が掛かるようになっている一軒家です。日本では余り見かけませんがアメリカではよくある形式です。大家もこのような需要に応えるような家を建てて家賃を稼いでいます。その飲み会でラクロス部員がお金を払って黒人ダンサー(North Carlina Central Collegeの学生アルバイト)を雇い、そのパーティーの最中、深夜3時ごろに風呂場で集団レイプ事件が起こったとされています。デューク大学(私立)はアメリカではエリート大学のひとつであり、またラクロスでは昨年NCAA Division I の決勝に進出している強豪校です。日本で言えば全日本選手権に毎年出場するような強豪チームが公式リーグ戦期間中に飲み会で女子大生コンパニオンを雇い、集団レイプ事件(Gang Rape)を起こしたと告発され、リーグ戦を辞退し、ヘッドコーチが辞任したようなものです。(決して特定のチームを指すわけではありません。)この問題が大きく取り上げられるのにはいくつかの理由があります。

1、エリート大学、デューク&人種差別
1年間の学費は約$42,000と言われており日本円にすれば約5百万円です。4年間ではありません。1年間です。これぐらいの金額であればだいたい食費・家賃(寮費)くらいは含まれるような気がします。小遣いは含まれないはず。純粋に学費のみなら3百万円程度かと思われます。食費・家賃が含まれていない可能性もありますが。アメリカでのエリート私立大学(アイビーリーグ等)に分類されるような大学はこれと似たりよったりです。もっとも「Student Athlete」とも呼ばれるVarsity(日本で言う体育会のようなもの)の部員は日本の大学同様に大学の広告塔の役割を担っておりほとんどの学生が4年間のVarsityでの活動と引き換えに奨学金をもらっているので上記のような授業料を払っているわけではありません。アメリカの大学では優秀な成績を取る、教授の手伝いをする、学内でアルバイトする、親が大学職員である、等々色々な形で奨学金をもらうことが可能です。(奨学金の金額はケースバイケース。途中でVarsityを退部すると退学になるケースもあると聞いたような気もします。)

余談ですが近所のYale大学(アイビーリーグの名門)の医学部の学生(友達の友達)は28歳で学費等々で借金が$240,000(約2900万円)あるとのことでした。卒業して晴れて医者になれば年収1500万円を軽く超えるので返済もなんとかなるらしいです。Yaleという肩書きがあればこそローンを組むことも可能なのでしょう。アメリカは学費も借金も桁違い。経済成長の源泉かもしれません。

デューク大学のあるダーラム(ノースキャロライナ州)の周辺には貧困層も多く存在しており、エリート大学への妬み(黒人vs白人)もことを複雑にしているような気がします。酔っ払った勢いで部員が黒人ダンサーに向かって「お前たちの先祖のおかげで俺たちはコットンシャツを着ることができている。ありがとう。(昔ノースキャロライナを含む南部の州では多くの黒人が綿花の収穫作業に従事していたため)」と暴言を吐いたとも報道されています。差別とは直接関係はありませんが、今回の事件でラクロス部員全員にDNAサンプルの提出が求められました。被害者が容疑者は白人と証言しているため47人いる部員で唯一の黒人部員はDNAサンプルの提出を免除されています。

アメリカの大学スポーツは華やかな一面もありますがたびたび問題を起こしています。アルコール関連、ドラッグ関連、拳銃持ち出して喧嘩する等です。また新入生に対するInitiationやHazing(新入生に対する「儀式としごき」といったところ)もよく訴訟となったりしています。日本で言えば体育会での新入生に対するシゴキで死傷者がでるようなものです。日本の大学や会社で新人に無理やり飲ませることも場合によっては犯罪となりえます。アメリカでは明確にInitiationやHazingを違法としている州もあるのです。このような問題の舞台に時々なっているのが大学の監視の目の行き届かないOff-campus residenceなのです。今すんでいるアパートの目の前にYaleのボート部のOff-campus residenceがありますが時々週末になると深夜まで大音響で音楽を鳴らしてどんちゃん騒ぎをし、ごみを撒き散らしてます。あまり関りたくない雰囲気を出しています。

3、色々な報道、慎重な調査。
報道を見ている限り非常に慎重に調査が進められているようです。DNAサンプルを提出したらすぐに白黒はっきりするものかと思っていたら以外にそうでもないようです。ドラマのCSIのようにはいかないようです。メディアはワイドショーのような報道をしています。黒人ダンサーは過去に泥酔後車を盗み逮捕された経歴があるとか、デューク大学は地域に雇用を生み出し貢献しているとか、ヘッドコーチは辞任ではなく更迭(クビに)されたんだとか、意味深なメールが事件直後に送付されたとか、事件がマスコミに知れ渡りトーナメントを辞退するまでに1週間ほどタイムラグがあったのは隠蔽じゃないかとか、色々です。日本の大学の体育会でも同じような事件は起きてますが、いずこも同じといったところでしょう。法律に触れるわけではないでしょうが学生がコンパニオンを雇った時点でかなり怪しいと言わざるを得ません。それは会社の慰安旅行でおぢさんたちのやることです。NCAAには一定の成績以上を取らないとVarsityの練習や試合に出場できないという厳しい規定もありVarsityの選手に大学の看板を背負って立つ文武両道のロールモデルの役割をも求めています。特別な待遇と引き換えに他の学生とは異なる重要な役割を担っているのです。にもかかわらず内外への影響の大きさを考えず軽はずみな行動を取ったのですから出場停止は当然だと思います。ヘッドコーチは確か15,6年デュークラクロスに関り、優秀な選手もたくさん育ててきたのにまったく惜しい限りです。日本ではラクロスで奨学金がでることはまれでしょうが、各選手が常にラクロス部だけではなく自分の所属している大学やそのスポーツを代表しているのだということを常に意識して行動しなければならということをこの事件は教えてくれていると思います。

(R1)DNAの検査結果は全員白と報道されています。しかしながら検察官はその結果が暴行が起こらなかったという事を証明するわけではないと述べています。ここまでくるとよくわかりません。大学側は高名な弁護士を雇っているようですし。色々見えない力が動き始めているような気もします。有罪か無罪かは裁判所が決めてくれるでしょう。それとは別に彼らの軽はずみな行動に対する責任はしっかりと問われるべきでしょう。

(R2) とある友人(Div.Iでラクロスしていた)からの話。2回目のDNA検査の結果が出て容疑者とは一致せずとのニュースを聞いた時の彼のコメント「大学の時ストリッパー(マスコミはダンサーと報道してますが)呼んだりしてたよ。$800でも40人で割れば$20だし。当然彼女らはごついボディーガードと一緒に車で来るわけででそれが商売(ビジネス)として成立していた。そういう意味では彼女らのプロ意識が若干欠けていたのかも。今回はSex、 Class(階層)、Elitism(エリート主義)というゴシップネタをマスコミが煽りたてているような気がする。」 なかなかディープなコメントでした。